どす黒い反射
獅童は二週目に入ったに過ぎない、と確信しながらにやにやしてしまうのだ。歌舞伎役者の血筋なのだ、そこをもっと自覚したほうがいい。
三度目も披露宴やるのかしらとか下衆い思いをめぐらす。
(俺の母方の伯母は三度目もやった。親族全員、終始真顔だった)
朝市の売り場で、ぶっさいくな嫁(後姿の印象)が旦那らしき男に
「うわーここにも売り場増えた。しっかり冷えてるね、このあいしゅ」
は?って殺意のみで振り返った。後姿しか見られなかったが、その女が劇的に受け口じゃなかったら、いい年こいてあいしゅはねえ。しかもたぶん不細工だ。俺の感情が殺意のみに鋭く研ぎ澄まされた。
俺は時々、この消費社会に何の疑問も抱かず社会の家畜のように生き日曜の朝に買い物に来られるようなのほほんとした連中に地獄を見せたくなる瞬間が確実にある。
具体的な方法は脳みそに直接、価値観をひっくり返えさせるブツをぶち込んでやることだ。俺は己の刃を研ぎ続ける。チャンスに備えている。絶対にそれはやめない。中二病がもう重篤化してやばい。これってくだらねえルサンチマンなのか。
不安や苛立ちに常に苛まれるのは、この足場があるせいなのはわかってる。
ずっと余裕がない。