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真髄。

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 京都一日目は夕飯を失敗したくないばかりに、数年前に使った店にいった。

 お笑い用語でいうなら、おいていったわけだが、失敗だった。

 ノープランでぶらぶらというモットーに反しておいていったのがよくなかった。

 むしろ何故こんなふうにしあげられるのか?ぐらいの味とそもそもの食材の質の悪さ。おい、大陸の内陸部じゃねえんだぞ、なんだこの魚介?生で出せるレベル過ぎすぎてるだろ!

 怒りのままに給仕のチャラ男に「ちょっと君、塩もってきて!」あるいは「これにんにくで焼いて出しなおせ!」と言おうかと。言いたい気持ち線が額ぐらいまであがってきたが、別に高級店でもなし、というか、そもそもどうやって作ってんのか厨房で見学させろと思ったが、ささやかな意思表示として料理を半分くらい残して店をでた。

 同じ店でも時間帯とかシフトの関係で料理の質が変わることがあるが、妙に客も少なかったので、ただ単に店自体の質が落ちたんだろう。

 普通に自分が作ったほうが美味いぞという苛立ちを抱え、ホテルにもどりコンシェルジュにこの辺に老舗の喫茶店はあるか?!と性急に聞き出し、夜の街を早足で向かった六曜社。

 もう、おねむのピークも極まっていたが口直しぜずにはいられなかった。

 何十年も憧れていた喫茶店。まさかこんなタイミングでお姉さんの口からその喫茶店の名が出てくるとは。

 いつか行こうと思っていた名店です。

 きっと、京都の学生たちがひしめきあって熱く文学論とかをかたっているんだろうな~とか盗み聞きするきまんまんで行った。

 地下へ降りたら、お客はアラフォーぐらいの男女一組(仕事仲間っぽい)のみ。

 自分は出入り口に近いカウンターに座って、上品なマダムにホットコーヒーを注文して店内を改めて見回した。

 狭いカウンターの奥に一点を見つめてまったく動きのないおっさんがいる。

 某三流大学の図書館で司書をやっていたときの古株職員に瓜二つだった。すごく似ていた。なぜか常に肩口が回っているのとかなにもしないところとか。店員なのに。マダムばかりが動き回っている。

 注文は電話で一階に連絡されるシステムだった。昇降機かなにかで下りてくるのかと思ったら、普通に若い給仕娘さんがトレーで運んできた。

 途中で若い学生らしき女子二人が入店してきた。

 自分はおねむのままコーヒーを飲んだ。

 すこぶるうまかった。

 そうか、この味が根拠なんだと。

 香りもうまみも一番いいところだけ抽出されたコーヒーはカップの底までおいしいままだった。

 コーヒーの美味さに浸りながら、マダムがガラスケースからドーナツを皿に移すのとかを眺めていた。特に考え事もなかった。

 女子大生たちは文学の話も授業の話もせず、自分の体臭について臭いと連呼していた。一日つけていたブラジャー外したとき匂い嗅いでみ?めっちゃくさいで?と。そんなん嗅いだことなかったわぁ。そんな臭いことないやろ?いや、臭いで、今度嗅いでみ?

 どうでもいいわ。と、すっかり満足して店を後にしたのだった。