散文詩

 あれは死んだ街

 廃墟ばかりの路地ですれ違った

 エウロパの傭兵と氷

 

 お互いに目的が見つけられずに

 ただすれ違って

 同じ時間を他人のように過ごしてしまった

 

 あの場所になにがあったのだろう

 名前を読んで呼び

 それが君の問いのようだった

 俺は答えない

 答えがないから きっと名前もほんとうは持っていなかったのに

 

 どこまで行っても埃と曇りガラスの向こうの雪の中

 雪はやがて固められて氷になり地面を固めた

 わずかな土を求め地下室へ降りる入り口に小さな鍵師

 家のない子供はいつも暖かい食べ物をねだった

 

 「明日もきっと氷と風の一日」 

 決まりきった明日を知らせることに意味があったのだろうか

 蝋燭の明かりを大事そうに両手で包んで

 雪雲の下のビルのちいさな部屋

 人の形をしたものが街の端から端へ行き来する

 どうして目的もなくあの場所で俺と君は生きていかなければならなかったのだろう

 

 地面の彼らはいかにも行き先があるように歩いていた

 地図をさえ携え雪ののうえに足跡をぐるぐると描いた

 港に船が来ることもなかった

 海などあの星にはなくすべての氷を割ることはできない

 

 そう知りながら俺もまた雪と氷の街を歩き回った

 まるで目的を持つように彼らに擬態して

 

 仕事とつまらない食事と少しのアルコール

 雪雲の下の小さな部屋

 少ない会話が数日おきに

 灯を点した君が名前を呼んでもそれは虚ろに響くだけ

 小さな部屋に