大和ぉ!!?

 菅田君の「大和ぉ!?」がギャグっぽくてわざとバカっぽく演出したのか?と思ってしまうほどだったが。

 もう8.9月は駄目だ!時間がなさすぎる!!

 ベエトはハードだし妹臨月によるちびたち預かりにより睡眠時間を削るレベルで忙しい!!けどこれはちゃんと映画館で見たかったので行ってきた。

 やっとアルキメデスの大戦みてきた。

 映画見て出てきたとき見たイオンモールの様子が逆に作りもののようにみえた。

 先の大戦でどんだけの人が犠牲になったのか。その時の人たちのうえに今この生活がが与えられているのだと思うと、謎の焦燥感におそわれる。食品売り場には捨てるほど食べ物があふれているが、違う国ではまだ当たり前に戦争があって、政権下によっちゃ何万単位で餓死者が出ていたりするんだよな。ええんかこんな世の中!!すぐになんとかするべきだが、しかししてわたくしひとりがなにができるというのか、いい考えもないしなんともできない!無力だ!!!帰って猫を抱きしめたい!!となった。

 

 

 もちろんネタバレ全開で感想いっちゃうぜ!

 

 というのも僕って戦争映画駄目じゃないですか~?(知らねーよ)

 もう辛くなるの。圧倒的暴力に非力な人間たちがさらされるのがもうだめなのー。戦争は残酷だし哀れ。しかも一番被害受けるのってお金のない市民だったりするやん。完全に巻き込まれてる側じゃん。インパール作戦みたいに前線で戦いすらなく餓死した人がほとんどとか、むちゃくちゃなんですよ。いやいや結局、世論っていうけどさ、わりと操作できるやん政治なりマスコミ使えば。

 だから冒頭の5分くらいは寒気がした。声出るよね。

 とことん現実を再現してた。

 映画通になぜか嫌われがちな山崎監督だが、今回は永遠のゼロでけなされたとこをかなり意識的に直したというかもう僕視点からはより左にきってきたなと印象を冒頭から受けた。

 そもそも今回の映画見ようと思ったのは少し前におかんに「ついでに永遠のゼロ借りてきて」頼まれ、お金も出したので一応ついでに見たことがきっかけになったのだが、俺の貧乏性ナイス。これは日本人なら見ておくべき映画ではと思ったほどよかった。

 百田さんの原作ということで上映中はわりと大きな話題になっていたがまったく興味なかったしみてなかった。百田さんとは根本的に考え方違うとこあるし。やたら戦争賛美の映画と叩かれてたし。でも実際見たら真逆で驚いた。

 映画永遠のゼロはかなりバランスのいい視点で戦争を描いた作品になってた。戦争って嫌だよね。もっというと今回のアルキメデス~と共通するテーマ、力をもったら使いたくなる。に焦点をあてた、人間の性が家族を愛するということもするし、国を守るとはいえ戦争という暴力をも発動させてしまうんやという深いとこまで問題を掘り下げた映画になってた。

 なので井筒監督の批判が全く意味が分からんかったというか、たぶん上映期間が近かった自作が跳ねなかったから山崎監督に嫉妬したんだろうなと勘ぐってしまうくらいよかった。

 永遠のゼロのよかったところは、主人公の視点がまったくなかったところ。周りの人たちの証言とか主人公の実際の言動で宮部という人間像がわかるようになってるとこ。これは嘘偽りがない客観的な視点で宮部という生き方を知れるわけだから、逆に最後の最後特攻する宮部と(狭い操縦席というある意味密室で)みる側のこちらが密に接する部分が効いてくるんだよ。特攻成功を確信して不敵に笑う宮部という男が、まさかそこまで家族のため軍人でありながら前線でいて自分だけ戦闘に加わらず(ものすごく不名誉でいつも周りからバカにされ笑われていた)自ら育てた若い兵士の戦死を見つつ帰還をし続け、さらに自国の軍部の無謀な作戦で勝機がないこともわかっていて、相棒である戦闘機も最初はよかったが他国の新しい戦闘機にどんどん性能が劣っていくこともわかっていた人なのか!って。

 でも自分に置き換えたらわかるんだよねえ。守らなければならない家族、嫁と娘を、自分の命を懸けて守った後輩兵士に預けられるという算段がついた。自分が育てた後継パイロットたちのあまたの特攻失敗、ただの無駄死にを目撃しつづけ、失敗の要因を蓄積してきて、さらに失敗例から自分だけ特攻を成功させるための策がみつかり操縦テクニックがある。自分にならできる。ってなったら試したくなるとおもうんだよね。しがらみがなくなったらパイロットとして矜持というか男としてバカにされてきた分俺ならできるんやぞというとこみせたいとかやっぱりすごい戦闘力を持ってたら試したくなるというか、まさにブレイキングバットのウォルターと同じとこでてきちゃうと思うんだ。でも宮部という男はキリストの生まれ変わりと言われているキアヌとおんなじこといっちゃう(なぜあなたは特攻に出ないのかと後輩に責められた時、あなたが死んだら周りの者が悲しみますよ、それだけでも命を大事にしてくださいと言った)くらい、人として慈悲と配慮を持った人間なのよ。自分の命狙ってきた後輩(新井さんがまたこれ抜群によかった!!)にも暴力は向けないし、周りを育てる、いつもものを直すという行為でこの人の人徳がちゃんと描かれていたがほんとに素晴らしい人格者だったけどそんな人でも、戦争が続くうちどんどん病んで壊れて行って、でも特攻に手を挙げた日には急にいきいきとなって突っ込んでいったという恐ろしさを描いてたよ。

 そして今回のアルキメデスだが永遠のゼロで戦争賛美と叩かれたからなのか、かなり登場人物たちを突き放した作りになってた。

 そこまで当時の人バカにすんなよーとなるくらい。

 例の艦隊のモブがわざというくらい人形ぽくしてあるのとか。

 今回も力を持ったら使いたくなるというのと、象徴という幻想の二本柱テーマがあったと思うが、まさにあのモブは象徴に加担した何も考えずに策もない泥船に賛同した一億総人形化の痛烈な皮肉にもとれた。現代の日本人を皮肉ったのかもしれないけど、冒頭でも象徴を得て力がより一層増すみたいなセリフがあったが、実際の戦時中には真剣に銃後の市民を守ろうと戦った人や、欧米列国の支配からアジアを守るという志のある軍人もおったと思うから、あまりすべての人間をあほのように描くのもなんだかなあ。となるくらい今回の映画の軍人はアホっぽく演出されてた。とくに橋爪さんが演じたあの軍人はアル中でまともに呂律が回っていないありさま。

 そしてもういっこ前回反省点であったであろうエンディング。永遠のゼロでエンディングで長渕流れた時、それはないわーと思ったのよ。わりと客観的に演出された映画だったのに急にエモい感じできて、下の方のただ巻き込まれた市井のひとだった一兵卒の犠牲までまるでみなが自主的に死んだみたいになっちゃうじゃんって感じたから、アルキメデスは劇伴で静かにエンドロールにしたのかな。

 ただ、史実としてある大和沈没までの展開をなるほどなというストーリーにしてたのすごかった。シス的な本当の黒幕平山忠道がおそろしかった。リアルな恐ろしさ。どっちかというと現代的な考えをもった人だった。象徴の大和で自国の戦意を挫きたかったのに原爆投下までいっちゃったんだよなあ知ってるこちら側は苦々しくなる。決定会議のシーン菅田君が大和の設計上の弱点、高い波に対して船底の低さ?に脆弱性がある、万一に備えるのが設計者の責任だと指摘するシーンはどっかの電力会社のひとの耳に痛い話でしたよね。

 あと、大型模型があるあそこってカメラを止めるなとおなじ場所じゃなかった?それが気になってちょっと集中できなかった。

 冒頭の大和の小型模型登場のシーンは「うわあ!かっこいい~!!」ってなってるおっさんたちみて、正直あったんだろうなと思った。かっこいいお船とか戦闘機みたらわくわくしちゃうし作れるチャンスあったら作りたくなるんだろうな。男のロマンってやつも戦争の原因の一因でもあるはずやねん。これは仕方ないことなんだよ。男は狩りで女子供を食わせる役だったからオスがあぶれたりしたら戦闘要員が増えるのかもしれん。あの時代は世界恐慌もあったし。理屈じゃねえ部分が働いてしまうんだろう。櫂正も大和を生み出してしまったことで心の底では喜びを覚え美しいと思った船を現実に生み出してしまったのだし。だけど実際映画の中の大和は美しくはなかったし、ごてごてして禍々しい感じに描写されてた。人間を敵も味方もなく殺すデカい鉄の塊でしかないように描かれてた。

 実際呉であれを作った人たちはどうだったんだろうというとこまで考えちゃうよな。あと、予算出すための手段探し始めたとこからなんで造船所いかんの?って胸中激しくつっこんでしまった。造船所の下っ端に工員に紛れて聞いたらわりと簡単にわかりそうなのに…でもそんな地味展開ないか。

 鏡子さんとこにシス側の手下が行ったときはまさかあいつと婚約させて櫂君に精神的ダメージを与える気か?!とラブコメ脳で考えてしまったがそれはなかった。あいつかなり嫌な軍人だったからその線なくてよかった。キャラクター的におもしろかったのは、鏡子さん現れてからの鶴瓶の寝返り方よ。あと明らかにカンペ見たよね?

 柄本君よかったなー。最初は櫂君のこと見下してたのにどんどんバディ感出てきて櫂君の強力な味方になっていく。

 櫂君のいきなり少佐になるわくわく展開はたまらんかったです。あと、鏡子さんとの関係を問われたときに心は通じたが測っただけなのに!って。何その解答。あと菅田君が数式理解しながら演技してたそうだけど凄かった。マジかよ菅田君凄すぎやってあのこ。もうー。

 国村さんも相変わらずすごい存在感やったし舘さんもかっこよすぎて逆にいかんとおもう。が、舘さんとは橋爪さんの会議中、士官学校の遺恨とかセカンドの芸者暴露された喧嘩とか仲悪い同級生感は面白かった。 

 決定会議で実はユダだった軍人が強引に進行するので、いい声で洋楽を紹介して流そうとするな!!やめろ!ラジオパーソナリティ!という謎のイライラに襲われるよな。

 

 いっちゃん凄かったのはやっぱ田中さんだったけどね。ハガレンのタッカーぐらいキャラ変する。本気でやべーこと考えて覚悟決めてる人間の変に静かな気配というか恐ろしさというか。眼鏡が反射して表情も消えて、政治家も軍人も所詮市井の人の生活なんか考えて仕事してないとつくづく思うが、ほんとに自分一人で一身になにか重大な判断をしようとする奴ってやべーよな。そういうひとって手段選ばないやん。今なら文さんとかけっこうやべーよなと思うが。映画の最後のシーンの菅田君も平山と同じ表情になってるの。取り返しのつかない決断をしたことを噛みしめて飲み込んでいるものな。

 

  まだまだ書ききれてないことあったと思うが、アルキメデスの大戦という映画は冒頭の五分のためだけにでも映画館で見る意味はあるという映画ですよ。