でもしぼんでたものが膨らんだ感じ。
俺は水晶浜に着いた瞬間、目的を果たしたんだよ。
海が見たかっただけだから。
松の木陰でぼーっとアベックを眺めていて、足についた砂粒を見て、みるからに石英の粒で、ああ、そんでこの浜は水晶浜といわれとんのかと納得して、
じいさん犬の記念写真とっとるがな、フレンチブルふたりちゃんとカメラ目線でポーズをとっておるがな、
自撮り棒のギャルたちさっきから30分くらい同じ場所で同じアングルでとっておるが
ついに「ちょっとまってさっきの写真とおんなじじゃなーい!」って気づいたか。若さってすごい!ってイラッとしたり、
身重の猫を「あなたとっても美人さんだね」ってナンパしたりしたあとの虚無感と軽い熱中症状態。
帰りたいような二度と帰りたくないような。
いっそ、うんと遠くへいってしまおうか。
小さな半島の根元を反対へぬけた。気比の松原へ。
写真を頼んでくるんじゃねえ!(ちゃんと二枚とってあげた)
しゃべりたそうに犬を使って寄ってくるんじゃねえおっさん!(ガン無視)
早々に松原は退散した。
いきは北陸道から美浜へでるきれいでかっちょいい有料道路を使ったが、もどりは角度のきつい登りで嫌だなと思っていたところを、半島をショートカットしたおかげで北陸道敦賀ICすぐで、帰りはやたら時間も高速代も小さく収まった。
けど、事故で小一時間の渋滞があったから、養老SAでまったり。
浅祥ウォーランドのおひざ元で戦国ラーメンを食う。まわり中国人観光客だらけ。関ケ原っていっつもどよんとしてて、霊感とかはないけどあんま好きじゃねえから、戦国ラーメンってどうなのよって思ったけどうまかったからまあいいや。
真っ暗な高速から都会の夜景が近づくと急に寂しくなる。
新幹線と一瞬並走して光の矢のように去る人工物に興奮と畏怖を感じ、いつもの場所に戻ってきて、うん、なんもかわんねえ。