感想。「カメラを止めるな!」「スリービルボード」

 キングオブコントハナコは見事だった。

 二本目の、走り疲れて寝そべった女学生の横顔がもういっそ思春期少女特有の透明な色気のようなものさえあったし、落ちのセリフもよかった。

 オモクリで劇団ひとりが監督した浜辺のアイドルビデオ的なあれを思い出した。

 犬のほうも、犬飼ったことある人間ならわかるーな犬の中の人間臭い部分をよくとらえてるコントだった。

 

 少し前に「カメラを止めるな!」を見に行って、面白かったんだけど残念だった点を先にお知らせしたい。

 やたらにどんでん返しが~どんでん返しが~っていうレヴューがあったので、すごく深読みしてみてしまったせいで素直に楽しめなかったんだ!

 町山さんのネタバレなし映画紹介がちょうどいい前知識になるかんじだった。

 どんでん返しというほどのトリックでもないし、そもそも冒頭からカメラの視点が二つあることで十分に後半の展開は予想できるように作ってある、ということは肝はそこではない。ということだ。開始5分くらいで、え?どんでん返しってこれのことじゃないよね?!え、もっと裏の裏の裏ぐらいいくよね?って相当数の手を読んでしまったせいで、普通に楽しめた映画を普通に楽しめなかった。

 なのでハードル下げ気味で見てほしい。

 ネタバレ↓文字反転

 あのカメラマンゾンビの動きはめちゃくちゃツボに入ったし。センス良すぎる。

 そのゾンビの撮り方もゾンビ映画わかってる~!!っていうぐっとくるポイントもあってよい。カメラマン助手の女の子好きだな。あの子わかってる。

 うんこしながら泣いてるのにメイクされてる音声君が、冒頭あの場面であそこまで素で座ってた理由があって、ああそうかとなる。

 脚本上必要ないシーンが入ってる作品て傑作だなと思う僕なのですが、これ意図なしでこのシーン撮ったの?それはすごいぞと思ったシーンも後半でほとんど理由があったということで回収されてしまい、ああ~そっかーて少し残念になってしまったぐらいよく作り込んであった。怪我無いということはなによりよ!って何回も念押しする無駄なせりふ回しもよかったけどやっぱ意味あったかー!っていう。ぽん!は笑った。

 後半でてきたプロデューサーのおばちゃんの造形よすぎるでしょ。みんなが一番苦労してるとこで携帯いじってるし。脱力してみて楽しめる父泣き映画だった。あの肩車の写真は絶対回収すると思ったので最後のシーンはやっぱりねってすごく冷静にみてしまった。よく作りすぎてるとこが逆にもったいない映画でもある。

 

 あとはレンタルでやっとみれた「スリービルボード」めっちゃ面白かったー!!!

 期待値の3倍くらい上回ってきた。

 落語みたいな映画。世の中の8割はバカというご意見があるが、僕は岡田のトッシーがそれをより詳しく解説した、すべての人間の中の八割の部分がバカで出来ている。といったのがより現実に近いとおもうのだが、そういう人間をそのまま映画にしたのがスリービルボードだと思った。

 同じ人間の中にバカな行いと考えがあるが、時々神聖な考えも行いもあって、それが日々生活の中で相対した人の行いからも作用しあって発露する瞬間をとらえたいい映画でした。

 

 

 ネタバレして感想

 

 

 ほんとにどうしようもないぐらいバカなんだけど、そのバカさはことさら誇張したようなことじゃなくて、それぞれの立場にしたらそれが当たり前で日常的な言動になるから、激しい過ちも日常の延長線上だし、だから誰かが激しくそれを断罪するという目線も(作り手からの)ない。それが素晴らしい。

 そういう映画だから、お母さんの冒険の解決はやってこないし、よくよく考えたら関係ない署長の人生の締めくくり方も物語に入ってくるし、希望も絶望も予告せずに終わってしまう。

 砂がいっぱいあるとこのくだりはほんとぞっとした。人間のどうしようもなさを悪意じゃなく、優しくそのまま描きながら、現実に起きてる問題をさらっといれてくるのが、やべえ。米兵が戦場でやってる犯罪が野放しになっているという現実。

 人種差別と性差別の激しいあほの警官なんか、たぶんホモのホモフォビアやし。隠してるから余計にゲイっぽいひとを攻撃するんだよね。おかんに彼女なんかいるわけねえだろ!と断言してることも暗に示されてる。(風穴開けるぞっていうシーンは親離れのシーンでもあったので、そこからゲイである自分を認めることも始まっていると思う。)アバの曲であんなに風に乗れるか?という笑いポイントあるけど。あの乗り方、トランス系か黒人のゴリゴリのラップかよっていうぐらい。オレンジジュースのシーンはラブ始まっちゃう?っていういちゃいちゃシーンにしかみえなくて、感動っていうか「おやおや」ってなりましたが。

 最後の道々考えるわっていう二人。人はいつも良い判断や行いをするわけじゃないから、明日どうなるかわからない主人公たちなんだよ。ミズーリの町に戻って主人公のお母さんはあの優しい小男と幸せに暮らしてもいいし、元警官は警官に戻って、もしかしたら広告会社の男と恋してもいいし、復讐のための殺しをやったらさらに事件が雪だるま式におきるかもしれないし。

 こちらとキャラクターたちに物語を託してくれた終わり方がいいよねー。

 ほんとにいい映画だった。